立腰教育の根拠について

立腰教育を、古い時代の教えであり、現代には適合しない、むしろ、健康に問題のある教育だと主張するお医者さんもおられます。

立腰教育は形だけを見られがちですが、その本質は違います。

立腰教育の本当の目指すものは、形を通して目に見えない心を育てていくこと。 腰骨を立てたり、挨拶、返事、靴を揃えたり、場を清めたり、時を守り、礼を正すという行動「形」を通して目に見えない心を育てています。

九大名誉教授 池見酉次郎氏の見解

私は多年、心身一如のセルフコントロール法、とくに体を整え、心を整える方法について研究し、それを健康増進や治療の目的で活用してきました。ところが実際問題として、忙しい現代人に時間のかかるセルフコントロール法を実行させるのにはいろいろと困難が伴うものです。私自身も自分でやってみて、どの方法でも長続きしにくいことを体験してきました。そのような時、たまたま森信三先生の立腰道に出会いました。先生はかつて、神戸大学の教授であり、著名な陽明学者で、教育についても深い見識を持っておられます。先生の立腰教育入門を一読して、私が長い間求め続けてきた セルフコントロール法の秘伝が、簡潔な立腰道の中に凝縮されているのに、感嘆いたしました。東洋の坐禅や正坐法のエッセンスが、本法の中に見事に抽出されており、まさにいつでも、どこでも、だれでもが、日常生活の中で実行できる方法になっております。

53年5月には産業医大の本多正昭先生の紹介で、じかに森先生にお目にかかり、私どものセルフコントロール法の考え方と、立腰道の接点について親しく談合をする機会に恵まれました。当時、先生は83歳でしたが、カクシャクとされておられ、先生の情熱を込めた明快な口調が印象的でした。私の丸い背中に比べて先生の姿勢の良さが目立っていました。

それ以来、私の捉えるセルフコントロール法に関心を抱く人たちにはセルフコントロール法の入門として、いつも立腰道を進めることにしております。

また近頃、急に増えてきた教育関係者のための講演では、かならず立腰道を紹介することにしております。

 

森信三先生は「現代の子どもたちの最大の問題であり、アメリカ式の教育の中で一番抜けているものは、根性・我慢・主体性を養うことであり、立腰教育が性根の入った子にする極秘伝である」と説いておられます。我が国で、森先生のお考えに共鳴して立腰教育を実践しておられる先生方も少なくないようです。中でも青森県、相内小学校の大庭茂校長は、かつて、立腰教育を通して、同校を健康優良校日本一にまでしておられます。次に大庭校長の「著書健康優良学校への軌跡―心身調和を求めて―」の内容の一部を紹介しておきましょう。

「即身的思考(体に即した頭の使い方)という森先生の言葉を発見した時に、踊り上がって喜んだ。これが教育の原点であったという発見である。」「体育も知育も徳育も一体であるということが分かった時に、自分は教育の青い鳥を見つけた。」「体育は身体までのものであってはならず、体から体を通して人間教育をするものでなければならない。」「心身を呼気と吸気のように調和させること。ゲーテは、『思考と実行は人の呼吸の如し』といって、思考と身体活動の調和の大切さを説いている。また島崎、藤村も「心を建てようとしたらまず身おこせ」と述べている。

池見 酉次郎(いけみ ゆうじろう)大正4年(1915年)6月12日 – 平成11年(1999年)6月25日)

日本の心身医学、心療内科の基礎を築いた草分け的な日本の医学者。九州大学医学部名誉教授。甥は臨床心理学者の池見陽。

福岡県糟屋郡粕屋町生まれ。旧制福岡中学(現福岡県立福岡高等学校)、九州帝国大学医学部卒業。戦後、アメリカの医学が日本に流入した際、心身医学の存在を知る。昭和27年(1952年)にはアメリカミネソタ州のメイヨー・クリニックに留学し、帰国後、日野原重明、三浦岱栄らと共に昭和35年(1960年)日本心身医学会を設立し、初代理事長になる。翌昭和36年(1961年)九州大学に国内最初に設立された精神身体医学研究施設(現在の心療内科に当たる)教授に就任し、内科疾患を中心に、心と体の相関関係に注目した診療方法を体系化、実用化に尽力した。

九州大学医学部名誉教授、自律訓練法国際委員会名誉委員長、日本心身医学会名誉理事長、国際心身医学会理事長、 日本交流分析学会名誉理事長などを歴任。